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各社ともいち早い顧客の囲い込みに躍起になるのも当然である。
その顧客囲い込みに有効なツールとして、「利益実感」の強いクレジットカードの導入をはかったわけだ。
マスターカードと提携して大成功をおさめたアメリカの例もあった。
マスターカードの発行銀行であるユニバーサル銀行そのものを買収して自社ブランドカードを発行したAT&Tの躍進ぶりに、カード会社、電話会社双方が大いに刺激を受けていたことは間違いない。
国内でのサクセス例としてはTカードのケースもあった。
これがFUPカードブームの火付け役となり、その成功に注目をした各企業が次々と同種類のカードを発行した。
国際電話業界とて例外ではなかったのである。
それにしてもわずか2カ月である。
驚くべきスピードでIDCはカードを立ち上げた。
プレスの発表はKDDのほうがはるかに早かったにもかかわらず、実質的発行はむしろIDCのほうがわずかながら早いといった速攻である。
そこまでスピードにこだわったのはなぜなのか。
KDDは、優良顧客を獲得しシェアアップをはかるためにSクレジット、クレディセゾン、JCBと提携したKDDカードの発行を96年6月ごろに設定していた。
この動きを事前に察知したIDCは、4月後半の段階で自社カードを発行することを決定する。
IDCの阿部課長補佐は「とにかく、KDDより早く出さねばと焦った」という。
というのも、こうしたFUPカードは「早い者勝ち」の要素が非常に強いからだ。
例えば、Tカードは他者に先駆け発行することで年間目標だった100万枚をわずか半年で達成させ、その後も枚数を順調に伸ばしている。
N、Hなども後に続いたが、時すでに遅し、顧客の囲い込みというより、自社顧客の流出防止が精一杯であった。
ガソリンカードにおけるSの成功を見ても、いかに先行者メリットが大きいかわかるだろう。
2匹目までは何とかなるが、3匹目になるともうだめというわけだ。
しかし、IDCの本音は、もっとストレートに「1匹日のどじょうになりたかった」のに違いないしQUの必死の猛追撃はこうして始まることになる。
IDCカードづくりのための根回し96年3月の末にKDDの動きを察知し、「1度取られた客は二度と戻ってこない」と危機感を持ったIDCのA課長補佐とE課長補佐は、サクセス例をもとに上層部を説得。
4月の終わりから急速作業にかかり、カード発表までの残された2カ月で何とかKDDに追いつこうと必死の努力を続けた。
普通なら、カードフェイスのデザインをするのにさえ2カ月はかかる。
どう考えても無理な話だ。
それが可能になったのは、若手担当者2人を中心にした社長直属チームを設置した態勢がものを言った。
彼ら2人が、カード制作の全権を社長から委任されたこともあり、作業・打ち合わせをスムーズに進めることができた。
「このスピードはきっとワールドレコードです」と海老根課長補佐は笑う。
まず、ゴールデンウィークの連休明けに主要カード会社にはすべて声をかけ、「何とか1カ月半でカードをつくってくれ」と無理を言った。
その厳しい条件をのんでくれたのが、UC、ミリオン、日本信販の3社である。
これらはすべてKDDカードを手がけていない会社である。
それにしても、これほど過酷なスケジュールにもかかわらず、名乗りを上げた会社があったのには驚く。
だが、そこにはカード会社の側としても、IDCカードを手がけたいと考える理由があったのだ。
カード会社も承知しており、通信事業者と提携することのメリットの大きさを十分認識していたはずだが、何よりも魅力だったのは国際電話会社のユーザーが自分たちにとっての上客だということだ。
っまり、国際電話をかける客層というのは海外、出かける機会も多くカード使用の頻度も高い。
国内においてもち生活レベルが高く消費行動も活発で、カード需要が高い魅力的なユーザー層なのである。
第二に、電話カードは間違いなくこれから大きな伸びが予想される分野である。
カードは近い将来ICチップカードに切り替わっていないだろう.その場合、テレホンカードはプリペイドカード式の使い捨て簡易型ICカードに姿を変える。
いずれクレジットカードにもlcチップが付くようになると、現在のテレホンカードのように、どんな電話端末にもそのカードを入れて利用するようになる。
公衆電話や卓上電話、携帯電話のすべてに使え、そのたびにICカードに料金が課金されるのだ。
その利用頻度は、今のクレジットカードの比ではない。
市場として見ると莫大なものがある。
それがわかっているから、KDDカードに参画できなかったカード各社はIDCのカードを手がけたいと考えたのである。
そのうえ FUPカードは「おいしい」ということだ。
「この種のカードはレコードとよく似ている。
数千枚出て、まずまず。
1万枚単位で出るとヒット、Tカードのように100万枚も出ると、これはミリオンヒットで紅白のくす玉を割ってお祝いしたいくらいです」と、あるカード会社の幹部は語っているが、100万枚とまではいかなくてもう電話カードなら1 0万枚は確実に見込めるから、たいていのカード会社は手を挙げようとするのである。
カード会社の創意にまかせるやり方一方で IDCとしても予算的にうま味があった。
キャッシュバック分をどこが負担するのかが問題になるが、米国では企業側も相応の負担をしているが、日本はほとんどカード会社が負担することになっている。
そういう慣例をつくったのはTだった。
「Tさんのおかげです」と担当者は語っていたが、IDCとしてもリスクは少なく持ち出しも最小限に抑えられ、しかも希望に沿ったカード発行ができるから、強気で交渉ができた。
このように、それぞれがそれぞれの思惑を持ちながら、共同のプロジェクトはスタートし、不眠不休の突貫工事で、システムは組み立てられていった。
短期間で仕様を決め、システム的な検討を重ね、業務の分担を相談し最終的な形にした。
「基本的にベースの部分だけ合わせる形で、後は各カード会社の好きにしてもらった」という。
Tカードでは提携各社のカードをTの基準ですべて横並びにさせていたが、IDCはある意味で差別化をはかったうえで、客に欲しいカードを選択してもらい、その選択肢の部分には苗の制約を加えないというスタンスをとった.例えば、ミリオンだけにギフト券プレゼントキャンペーンが付いているというのはその一例である。
次に目標枚数についてだが、IDCの強気な態度は初年度目標にも表れている。
KDDと同じく10万枚という数字を掲げたのだ。
「畑はKDDのほうが3倍大きいかもしれないが、ユーザーは3倍の強さでIDCのほうを向いているのだから」と海老根課長補佐は語る。
確かに、KDDはIDCの3倍ものマーケットシェアを確保しているが、客が電話会社に向いている割合ということではどうか。
国際電話を使っているという意識はあっても、KDDを選んでいるという意識はないのではないか。
しかし、IDCを使っている人には、KDD以外の会社で、なおかつITではなくIDCを選んでいるという意識があるのは事実であろう。
本部長が苦々しい口調でIDCに1本の電話を入れてきた。
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